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これは私が小学1年生の初めての夏休み、母方の祖母の家に泊まりに行った時の話です。
共働きの両親だった為、私は祖母の家に預けられたのです。
祖母と母の妹が住んでいる母の実家は古い木造の平屋で、母が小学生の頃に引っ越してきた家です。


その家には近づきたくなり場所が1か所だけありました。
それが「床の間」です。
何故かトラが描かれた水墨画の大きな掛け軸と鷲のはく製、
さらに木彫りの鮭を咥えた熊の北海道土産まで加わって、
賑やか且つ幼い子供が怖がる物しかない場所だったのです。
そんな事もあり夏休みという長期間、祖母の家に泊まる事は不安でしかありませんでした。

しかし、祖母の家の近所に住む小学生たちと毎日走りまわっていた事もあり、
しばらくは夜に怖い思いをする事もなく朝を迎えていました。
ただ、その日は遊び疲れて、夕御飯を食べた後すぐにリビングのソファに寝てしまったようで、
気がつくとソファでタオルケットを掛けられていました。

外は白み始めたばかり、カーテン越しに少し明るくなってきたのを覚えています。
その反射で、テレビにはソファで寝る自分の姿が映っていました。

しかし次の瞬間、テレビには私の姿が見えなくなり、
代わりにブラウン管テレビの奥から誰かが歩いて来るのが見えてきました。
最初は小さな黒い点、その黒い点が動きだし、どんどん大きくなってきました。

すると、その黒い点の正体がわかるような大きさになった時、私は体が動かなくなりました。
金縛り、という言葉はその当時知りませんでしたが、とにかく怖かったのは覚えています。
画面に見えていたのは、紫の着物を着た白髪頭のおばあさんでした。

そして、そのおばあさんは歩くように、どんどん近付いて来るのです。
はじめは全身が画面に映っていましたが、すぐに腰から上だけ映るくらいに大きくなってきました。

そのおばあさんは、今まで見た事のないくらい怖い顔をしていたのです。
眉間にしわを寄せ、目は鋭く私を睨みつけ、口は歯ぎしりをするように左右に動いていました。
その頃には、今まで経験をした事のないくらいの恐怖で目を閉じたかったのですが、
閉じる事が出来なかったのです。

ついに、画面に顔が大きく映った時にようやく目を閉じる事が出来たのです。
しばらくしてから、そっと目を開けると、今度は目の前にテレビのおばあさんが居たのです。

「お…ま…え…か…」

その声の後、私は気を失っていたようで、祖母に起こされるまでの記憶がありません。
朝起きて、祖母や叔母にもその話をしましたが信じてもらえるわけがありません。
でも、あれは誰だったのでしょうか?
そして、お前とは誰の事だったのでしょうか?

もしかすると、今も誰かを探しているのかもしれません。
液晶の向こう側から…。

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