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別府の観光で地獄めぐりと言えば、もはや切っても切れない関係。

ベタすぎて別に行きたくない…と思っているかたも少なくないのではないでしょうか。

実を言うと私もそうでした。


値段も高いし、見て歩くだけだろうし、それならその時間で温泉入った方がいいよと。

しかし遠方に住む友人が遊びに来た際、是非ともめぐりたい!と強い希望があり、
とうとう重い腰を上げる事になりました。
そして感想、もっと早く来てみるんだったと後悔の嵐でした。
確かに観光バスもたくさん来るメジャーすぎる観光地ですが、食わず嫌いはとても勿体無い。
そこで地獄めぐりの体験を交えつつご紹介しようと思います。

ちなみに「地獄」とは、温泉の源泉や噴出口の俗称です。
言葉が言葉ですので、文中どうしても「えっ?」と思う表現があると思いますが、笑って流して下さいませ。

【日本で初めての試み!亀の井観光バスによる地獄めぐり】
別府温泉で亀の井バスにより地獄めぐりが始まったのは昭和3年のこと。
亀の井バスを創立した油屋熊八という人はたいそうなアイデアマンで、
別府の観光地化に尽力した人でもありました。
日本で初めての女性バスガイドさんのお話は結構有名ですが、
それが始められた定期観光バスがこの地獄めぐりなのです。
これ以前にも地獄を観光するという事は行われていたようなのですが、
本格的に整備して観光地化したのはこの時からです。
若い女性ガイドさんによる七五調の案内がとても人気になり、別府の主要観光として定着しました。
以来80年余り、現在でも亀の井バスで行われています。
現在のルートは2時間かけて、地獄組合(すごい組合だ)に加入している8施設をめぐるというもの。
戦後まではもっとたくさんの地獄をめぐったそうですが、閉鎖や枯渇などで淘汰され、
現在の数となったそうです。

【地獄体験記】
■海地獄
茅葺き屋根の入り口を潜ると、想像していたよりも広い園内が見えてきました。
そして広々とした池に浮かぶのは…噂の大鬼蓮!本当に子どもがのったくらいではビクともしないように見えます。
反り返った縁の部分がより頑丈に感じさせます。
園内を奥へ進むと、とても澄んだコバルトブルーの池から、もうもうと湯気が立ち上る景色が見えてきます。
とても綺麗なお湯で、とても98度もあるように見えません。
この青さを見られただけでも海地獄に来た甲斐があると感じさせます。
ちなみにコバルトブルーの原因は硫酸鉄。この青さから「海」と呼ばれています。
そしてこの温泉で作った温泉卵がとても美味しいのです。
青い池をぐるりと散策して歩くのが気持ちの良い地獄です。
園内には綺麗な設備の足湯もあります。

■鬼石坊主地獄
海地獄のすぐ隣にある地獄です。坊主の名の由来は、泥湯の沸騰する様が坊主頭に似ていたから。
表面に輪を作りながら泥の中でフツフツと沸く様は結構異様です。
こうした噴気孔が園内のあちこちにあります。
しかし平成14年に再整備された園内は、青々とした芝生や白い石畳の通路といった清々しい造りになっています。
ちょっとした綺麗なガーデンといった感じです。
異様な泥湯とお洒落なガーデン…しかし絶妙にマッチしていてあまり違和感がありません。不思議です。
泥湯の他に、昔間欠泉があった跡では自然石の石組みの下からもうもうと湯気が立ちのぼっています。
そしてこちらにも足湯が。石造りの円形の浴槽で、
嬉しい事に背もたれ付きの椅子が浴槽縁に設置されています。
さらに私は入りませんでしたが、園内には鬼石の湯という立ち寄り湯があり、
家族湯も併設された綺麗な施設だそうです。

■山地獄
これまた海地獄のすぐ隣にある地獄です。
地熱により地面や岩肌からもうもうと蒸気があがるため、「山」という名前がつきました。
噴気孔としてはちょっと地味なのですが、ここの目玉はこの地熱を利用したミニ動物園です。
フラミンゴやカバ、ゾウ、ラマといった生き物が飼育されていて、観光客が餌を与える事ができます。
カバのいるミニ動物園って結構珍しいと思います。
そしてフラミンゴの独特なピンク色はいつ見ても綺麗です。

■かまど地獄
怪しい鬼の像がシンボルの地獄です。
竈八幡宮の神事に使うご飯をここの湯気で炊くならわしからこの名前がついたそうです。
ここは1丁目から6丁目までの地獄があり、海地獄のブルー、坊主地獄の泥湯、山地獄の噴気…
といった他の地獄の特色が集まっています。
園内はそんなに広くありませんが、コンパクトに周れるようになっています。
ここにも足湯が設けられています。面白いのは浴槽の底に小石や砂が敷かれていること。
気分やお疲れ具合によって今日はココだ!と選ぶのも面白いです。

■鬼山地獄
かまど地獄の隣にあるのが鬼山地獄です。ここは緑白色のお湯が沸く地獄ですが、
ここの主役は地獄ではありません。ワニです。
大正時代から温泉熱を利用してワニの飼育を行っており、
現在でもたくさんの種類のワニを大量に飼育しています。
ここは地獄という自然現象を味わうより、間近でワニの生態を観察するのが正しい過ごし方です。
1つの池に何匹ものワニがいるのが圧巻でしたが、
面白かったのは口を大きく開いたまま微動だにしないワニが数匹いたこと。
鋭いキバの迫力とのんびり口をあけたままのワニという、何ともいえないシーンでした。

■白池地獄
名前の由来でもある、白濁したお湯を滔々とたたえた地獄です。
青みがかった白いお湯は、明礬温泉や堀田温泉のお湯を彷彿とさせて入ってみたくなりますが、
ここも噴出口の温度は95度。熱湯なので危険です…。
しかし周囲の和風庭園とモワモワした湯気のおかげで、見ているだけで身体があったまっていくような、
温泉に直行したくなるような…冬場におすすめの地獄です。
園内には温泉の熱を利用したミニ水族館、熱帯魚館があります。
10種類くらいしか居ませんが、ピラニアが間近で見られたり、珍しいアマゾンの巨大魚ピラルクに出会えます。
そしてどマイナーなポイントですが、個人的に興味があるのは和風庭園にある石塔です。
特に大分県にしかない国東塔は、どこかに建てられたものを移築しちゃったそうなのですが、
南北朝時代制作の大きな姿はどっしりとしていて中々の風格。大分県の有形文化財に指定されています。

■血の池地獄
別府地獄めぐりといえば、ここの赤いお湯が有名なのではないでしょうか。
本当に地獄にあるという「血の池」のような朱色のお湯は、酸化鉄などの成分が溶けているため。
泉質は酸性緑礬泉です。
古くから湯治場とされてきた別府八湯の1つ、柴石温泉のすぐ近くにあるためか、
平安時代以前にもこの赤いお湯の事が記録されています。
広々とした池に赤いお湯が満ちている景色は結構ファンタジーだと思います。
そしてここにも足湯があり、何と血の池と同じ朱色のお湯に浸かることができるのです。
成分が濃いため、うっかり色の薄い服を浸けると染まってしまうので要注意。
この地獄はお土産屋さんが広々としていて、しかもオリジナルグッズ「血の池軟膏」(皮膚病に効くそうです)
も販売されています。地獄めぐり土産を揃えるならここが良いかもしれません。

■龍巻地獄
血の池地獄のすぐ隣にある地獄です。
ちなみに血の池・龍巻だけは柴石温泉近くにあり、他の6ヶ所は鉄輪温泉周辺にかたまっています。
ここの目玉は間欠泉。30~40分おきという短い感覚で、10分程度噴出します。
噴出するお湯の温度は100度ほどですが、吹き出す前の地下での温度は何と150度!ちょっと想像がつきません。
そしてそんな危険なお湯であるために、見学者に危険が無いようにと3m程度の噴出に抑えられているのです。
本来ならば50mは上がると言われていますので、諏訪湖の間欠泉のような姿が昔は見られたのでしょうね。
間欠泉の前には石造りの階段状ベンチがあって、まるで屋外ステージのようです。
ここには果樹園があり、育った柑橘類をジェラードやジュースにして販売しています。
私はまだ食べていませんので、次回は是非味わいたいです。

【地獄めぐりで気をつけたいポイント】
■お土産
地獄をネタにしたグッズや、温泉蒸気で作られたプリンなど名物はたくさん。
個人的には「毎日が地獄です」ロゴのTシャツが、ブラックジョークが効いていて好きです。
普段だったら引いちゃうネタでもついつい惹かれてしまう、これも地獄の不思議な魅力なのかもしれません。

■めぐりかた
各地獄の入場料は400円で統一されています。
8ヶ所共通券の設定もありこちらは大人2100円と、全部めぐる場合は大変お得。
しかし1~2ヶ所でいいやという場合は勿体無いのです。旅程に合った購入をおすすめします。
また先述した通り、地獄は鉄輪温泉と柴石温泉にかたまっていて、両者の距離は約3km。
歩いていくにはちょっと離れてます。
路線バスを上手く使うか、どの施設も広々とした無料駐車場がありますので、レンタカーでの移動をおすすめします。

■他の地獄も巡ってみよう
この記事に挙げた8ヶ所以外にも、同じような温泉噴出口が別府にはたくさんあります。
有名なものだと本坊主地獄や金龍地獄があります。
こちらもめぐってみるのもおすすめ。しかし現在では管理されていなかったり、私有地内だったりしますので、
事前の準備はどうぞ入念に。

■ここは行った方が良いおすすめ地獄
8つもめぐる時間は無いよ…というかたには、海・鬼石坊主・血の池の3ヶ所がおすすめです。
どこもめずらしい温泉が湧いていますし、「地獄」がメインとなっている施設。
別府に来られたからには温泉の種類の多さ、珍しさを味わって欲しいのです。
8つは無理でも3つなら、という場合は是非めぐってみてください。

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