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夏目漱石は明治~大正という時代に燦然と輝いた作家です。
そのため、彼の周りには多くの文人たちが集まり、
当然ながら当時の文壇では彼を意識する人が多数いました。
■漱石のライバルたち
漱石とよく比較される人物が、『舞姫』『雁』『ヰタ・セクスアリス』などを著した森鴎外です。鴎外と漱石は比較される機会が多く、2人とも官費留学生だった点も一緒です。
ただし、鴎外が明治19年にドイツに赴いた際には王宮を訪問するほどの経験をし、漱石が明治33年にイギリスに赴いた際には貧窮にあえいでいる描写が多くあります。
帰国後も、鴎外は軍医として「官」としての役割が多くなり、漱石は朝日新聞社に所属して「私」としての役割が多くなります。
漱石は個人の内面を捉えた作品が多く、鴎外は歴史に取材した作品が多いことも、2人の文芸家としての違いが強く現れています。
漱石を強く意識した人物として、『武蔵野』『牛肉と馬鈴薯』などを表した国木田独歩がいます。独歩が入院中に記した『病牀録』では漱石に対して批判している記述があります。これは、漱石が独歩の作品に難色を示したことに起因しているようです。
■漱石を取り巻く人たち
小説家として高名を得た漱石のもとには、多くの人たちが訪れました。
小説を書くことを勧めた高浜虚子(『ホトトギス』主催)や、若き日の芥川龍之介、『細川ガラシャ夫人』などを著した森田草平、『赤い鳥』を主催した鈴木三重吉など、枚挙にいとまがありません。
いわゆる「木曜会」です。
こうした人々が訪れるたびに漱石は酒や洋食を振る舞ってやったそうで、漱石の面倒見のよさが窺えます。
その一方で癇癪持ちの一面もあるため、雷が落ちることもしょっちゅうであったようです。