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漱石の作品には、食べ物に関するエピソードがあちこちに溢れています。

それだけではなく、漱石の日常生活も同様に、食べ物に関するエピソードがそこかしこに溢れているのです。

谷崎潤一郎のように、食べることを正面から扱った作家ではないにせよ、

漱石が食欲溢れる作家だったのは間違いないところです。


■漱石作品に登場する人物の食欲

漱石の作品における食べ物の描写で有名なのは、『坊ちゃん』があります。松山に赴任してすぐに、好物の天麩羅蕎麦を4杯平らげて「天麩羅先生」とあだ名されるのは有名なエピソードです。

『吾輩は猫である』も食べ物に関するエピソードが多く出てきます。
主人公の猫は主人の食べ残した餅をつまみ食いしようとして、ねとつく餅に足を取られて「踊っている」とからかわれ、主人はパンやジャムなど高級品を好むことで細君に嫌味を言われたりなど、こうしたエピソードがあちこちにあります。

その他の作品では、『草枕』で日本の懐石の色彩は芸術的に見事だと感嘆するシーンや、『それから』でホットチョコレートを勧めるシーンなどがあります。

■漱石自身の食欲

作品の中で、食べ物にまつわるユーモアをちりばめた漱石自身も、食欲旺盛な人物でした。

友人の正岡子規が、自分に黙ってツケで鰻を取り寄せて食べていたことを日記に記したり、大好物であるビスケットを送ってくれた友人にはこの上ないほどの感謝の返信を送ったり、落花生を砂糖で固めたものを食べすぎて鏡子夫人に怒られたりなど、こうした話があちこちにあります。

写真で見る理知的な漱石の姿や、明治の国民的作家というイメージに合わないユーモラスさです。

漱石の食欲は、持病の胃潰瘍を抑えようとする目的もあったようですが、それを差し引いても食いしん坊で、入院中も頭の中で献立を考えて埋め合わせていました。

漱石の臨終は、一匙与えられたワインを味わい「うまい」と呟いたあと、静かに目を閉じたそうです。末期のこの葡萄酒はどのような味がしたことでしょうか。

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