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大衆演劇は古臭くて、オバチャンの娯楽のようなイメージを持たれている方が少なくないかもしれません。
かくいう私も全く興味がありませんでした。
母に誘われて、半ば無理やりに連れ出されるまでは…


初観劇は、地元名古屋の鈴蘭南座。
長い歴史を感じさせる古めかしいハコに入って、哀川昇座長率いる新生真芸座の開演を待ちました。
若い女性もちらほら。開演前にかかっていたのは、なんとEXILEの軽快な曲。
(なんか、大衆演劇のイメージと違うのですけど…)

その日は、三部構成で顔見せミニショーから始まりました。
うぁ、なんか生々しい…(笑)近い!とにかく役者と観客が近い。
あ、目が合った!とか、ドキドキする近さなのですね。
「生」の迫力、美しさ、息づかい…そんな「生きたもの」「人間臭さ」みたいなものを感じるわけです。

個性ある役者さんの一人ひとりが輝きを放っているのも印象的。
なんだろうこの光は?これがオーラといわれるものか?単なる照明か?いや、違う、心から舞台を愛しているからこそ放たれる気のようなもの。
一生懸命な姿勢が醸し出す気なのだ、という結論に至って、とにかく魅了されまくったわけです、はい。

第二部はお芝居。
この日は人情劇で、笑いあり、涙あり、アドリブありの充実ぶり。
特に昇座長の圧倒される存在感と迫真の演技に目は釘付けに。
きっと全身で演じているからこそ伝わる情感。
ハッとするセリフまわし、手の先、足先、目の奥まで演じきる役者魂…役どころにあった所作や細やかな演出まで巧み。
笑わせて、空気が緩んだと思いきや、次の瞬間、泣かされる。観客は感情を揺さぶられっぱなしなのです。

泣き笑いのあとは、口上挨拶。
この日のトークは少なかったのですが、観客をいじりながらのお話が大好きな座長や、日頃のストレスを面白おかしく表現されるなど、ここでも笑わせてくれます。
この時間に前売り券や劇団グッズの販売があり、役者自ら客席に降りて回ります。役者と観客がグッと近くなるひとときでもあります。

休憩をはさみ、第三部は舞踊ショー「花の舞踊絵巻」です。
豪華絢爛な衣装に身を包み、艶やかに舞います。
現在は、女形役者とはいわず、女形も立ち役(男形)もどちらもこなします。
(「花形」といわれる役者さんはいますが、立ちもこなします)

衣装を替え、鬘を替え、メイクを替え、入れ替わり立ち替わりの豪華な舞台です。
曲は演歌、浪曲が中心というわけでもなく、わりと最近の歌謡曲(J-POP)やK-POPなどさまざまなジャンルの曲が流れます。
既存の大衆演劇の枠を打ち破って、斬新な舞台が繰り広げられていきます。若い客層が増えたということもあるのでしょう。

男が女になり、男が演じる美しすぎる女っぷりに目を奪われます。
昇座長といえば、色っぽさが全面に溢れ出ている役者さん。
役者それぞれの個性がありますが、可愛らしいウインクや官能的なエアベッドシーンがさまになるのは昇座長のなせる技でしょう。
演技なのか、素なのか…(笑)。大衆演劇は、他の舞台に比べて制限が少なく、その魅力は無限大といえます。

颯爽とした立ち役と妖艶な女形を堪能した3時間は、思いのほかあっという間。
こんな世界があったのかと衝撃をうけるほどの魅惑空間…

時を超え、時代を超えて生きる日本文化や、役者のダンディズムに身も心もどっぷりつかって酔いしれることができる、
それこそが大衆演劇の醍醐味ではないでしょうか。

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