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■「妖怪って何ですか?」誰かにそう聞かれたとき、うまく説明できますか?
映画や小説、漫画やゲームなど、様々な媒体で取り上げられている『妖怪』。
少し注意して探してみれば、個性豊かな妖怪たちが登場する数多くの作品を目にすることができます。
例を挙げれば、国内外で根強い人気を誇る有名映画『千と千尋の神隠し』や、爆発的なブームを巻き起こしたゲーム『妖怪ウォッチ』。
他にも好きな妖怪作品がある方もいらっしゃるかもしれません。
そういった作品を通じて日本人にとって馴染みのある妖怪ですが、改めて「妖怪って何?」と聞かれたら、実はよく分からなかったり、説明できなかったりするのではないでしょうか。
『千と千尋』を観た外国人の方や『妖怪ウォッチ』が大好きな子供たちにいつ聞かれても答えられるよう、妖怪について少し知ってみましょう。
妖怪は民俗学の分野に含まれ、時代や学者さんによって見解が異なるうえ、彼らは捉えどころのない存在ゆえになかなか厳格な定義はしにくいのですが、難しい話は抜きにして緩くおおまかに特徴をまとめてみます。
【妖怪の特徴】
●化けたり隠れたりして、ひとにいたずらをする人間以外の存在
化けるといえば代表的なのが、何といっても狐や狸。日本では昔から色々な動物たちがひとを化かすとされていました。
現代より自然豊かで動物たちが身近だった時代では、動物も妖怪の仲間として見られていたのです。
●出てくる時間帯や場所が妖怪ごとに決まっていることが多い
例えば火の玉などは夜に出ますし、川にはカッパ、雪山には雪女と、妖怪たちにはそれぞれ好む時間や場所があるようです。
裏を返せば、彼らの縄張りに近付かなければ遭遇しないで済むということでもあります。
触らぬ神に祟りなし、は妖怪にも言えるのです。
●常識では説明できない不思議な現象や生物
山で「やっほー」と叫べば「やっほー」と返ってくる現象。
今では声の反響として科学的に説明されている『やまびこ』ですが、昔は『やまびこ』という名の妖怪の仕業とされていました。
不思議な出来事の原因を追究して進歩していくのも人間ですが、不思議なものは不思議なものとして受け入れるおおらかさも、人間の良いところかもしれません。
ところで、不思議な生物の例として、面白いものがあります。
幕末から明治初期辺りに描かれたと推定される『怪奇談絵詞』という絵巻に、一八〇四年から一八年のころ、鐘崎浦という場所に珍獣が現れたとの奇談が載っています。
ところが現在、絵巻の絵を見てみると、何やらその珍獣には見覚えが。
なんと、あざらしにそっくりなのです。
このように、その時代に一般的でなかったり、知られていなかったりした生きものがひょっこり姿を見せたとき、
驚いた当時の人々は珍獣や妖怪として恐れたり、話題として取り上げられて瓦版に載ったりしていたようです。
【結局、妖怪ってどういうもの?】
妖怪の特徴として大きく三つの要素を挙げましたが、どうだったでしょうか。
「なんだ、今じゃ科学で証明できたり、動物図鑑に載ってたりするものばっかりだ」、なんて感想を持たれる方もいらっしゃるはずです。
それもひとつの視点ですが、しかし、目に見えるものばかりが妖怪ではないことを忘れてはいけません。
彼らは化けたり隠れたり、暗闇に紛れてどこかにいるとされるのです。
夜、電気を消して、できれば自分の手も見えない真っ暗闇のなかで、さらに目をつむって、自分の息だけが聞こえるような静かな場所でなら。
そんな、明かりに電気ではなく灯を使っていた、いつかの時代にそっくりな環境でなら。
ひょっとしたら、妖怪に会えるのかもしれません。
妖怪は、日本の文化や自然に根ざして繁栄してきた存在なのですから。
【参考文献】
編纂・大塚民俗学会『日本民族辞典』(弘文堂、昭和47年)
編著者・湯本豪一『妖怪百物語絵巻』(国書刊行会、2003年)(『怪奇談絵詞』収録書籍)