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■福を呼ぶ? 災害を予言する?よく知られた妖怪たちにまつわる話
人間に害をなし、ときには襲ったり喰らったりする妖怪が語られる一方で、
それらとは逆に人間に幸いをもたらしてくれたり、災害を忠告してくれたりする妖怪も存在しています。
ここでは、そんな妖怪たちのなかから、『座敷童』と『人魚』をご紹介します。
現代の我々にも広く知られた名前ですが、ひょっとするとご存知のものとはちょっとばかり異なっているかも……?
まずは『座敷童』。
民俗学の草分けたる柳田國男の『遠野物語』などで有名な妖怪です。
精霊や神様の一種とする見方もありますが、座敷童の名前が示す通り、外見は子供であるとされます。
子供の姿をした神様と聞くと、かわいらしさにほっこりします。
ただ、見た目が子供だからと侮るなかれ、危害を加えるなどもってのほか。
なぜなら、座敷童のいる家は繁栄し、去った家は没落の一途を辿るからです。
座敷童は名の知れた存在なので、『家の盛衰に関わる』、『家につく守り神である』、という認識は、
多くの方が持たれているのではないでしょうか。
もし会うことができたら、丁寧におもてなししたいですね。
次にご紹介するのは『人魚』。
言わずと知れた大御所とでも言うべき存在ですが、ところで、人魚と聞いてどんな姿を想像するでしょうか。
上半身が人間の女性で下半身が魚、という姿を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
もちろんそれは間違いではありません。
『その肉を食べれば不老長寿、または不死になれる』と伝説に残っている人魚は、現在でも小説やマンガに登場する人気のある妖怪です。
ただ、絵巻物で人魚の絵を探すと、ちょっとした衝撃を受けることがあります。
馴染みのある半人半魚の姿以外にも、何やら爬虫類と魚が合体したようなものや、魚にひれのついた手足が生えたようなものも、人魚として描かれているのです。
どうやら、山椒魚やジュゴンなどの生きものが人魚のモデルだったらしく、
半人半魚の人魚だけではなく、上記の奇妙な外見の人魚も描かれていたようです。
さて、人魚の伝承は不老不死の伝説だけではありません。
沖縄県に伝わる昔話にこんなものがあります。
漁師が網にかかった人魚を助けたところ、助けてもらった礼に「近いうちに津波が来るから避難した方がいい」と助言を受けるというお話です。
予言をもたらす海の使いとして人魚が語られており、不老不死伝説とは一味違った一面が窺えます。
よく知っているつもりでも、実は思いもよらない顔がある。
これは人間だけではなく、妖怪にも当てはまるのかもしれません。
悪さをするもの、福を呼び込んでくれるもの、その性質は様々ですが、どれも確かな妖怪の一面です。
都合の良いところばかりに向き合うのではなく、誠実に付き合うのが肝要ということでしょうか。
そうでなければ、きっと座敷童は家を捨て、人魚は津波の襲来を知らせてくれはしなかったでしょう。
【参考文献】
編著者・京極夏彦 他『北斎妖怪百景』(国書刊行会、2009年)
著・福田晃 他『八重山・石垣島の伝説・昔話(一) 琉球の伝承文化を歩く1』(三弥井書店、平成12年)