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■あなたのそばにいるかもしれない?都市に、街に、人間の周りに息づく怪奇

「小説とかマンガとかで見ることはあるけど、でも、妖怪ってもう昔のものだよね」
そんなふうに思っていたりしませんか?いいえ。案外、そんなことはないのです。


大きなマスクをした女性に、「私、きれい?」と呼び止められる。
きれいですよと答えると、マスクを外して見せつけられるのは耳まで裂けた真っ赤な口――「これでも、きれい?」。

これは、一九七八年から爆発的に広まった、『口裂け女』の話です。
はじめは子供たちの間で出回っていた噂話でしたが、口から口へと伝わるうちに全国的に大流行となり、雑誌や新聞に取り上げられるまでの存在感を得ました。
『都市伝説』の筆頭といえるでしょう。
都市伝説の語が含む意味はかなり広いのですが、ここでは怪談系やオカルトに注目していきます。

口裂け女の他にも、ごみをあさっている犬がふいに頭を上げると、その顔が人間だったという『人面犬』、
学校の七不思議として定着している『トイレの花子さん』なども、都市伝説の代表格です。
彼らは、古くから伝えられてきた妖怪たちとはまた別の、現代版の妖怪と解釈できるのではないでしょうか。

建物は木造から鉄骨に。証明は灯から電気に。
技術の進歩と共に変化していく生活や文化のなかで、妖怪のあり方が変わっても何の不思議もありません。
例に挙げた花子さん、学校の七不思議は、教育制度が整えられ学校という場ができたからこそ語られるようになったのでしょう。

「わたし、メリーさん。今、あなたの後ろにいるの」
携帯電話が普及しなければ、この『メリーさん』の怪談も生まれなかったでしょう。
また、少し毛色が違いますが、心霊写真などは写真ありきの怪異です。
環境や技術の移り変わりのたびに、『不思議な何か』も手を替え品を替え、存在を保ち続けているのです。

「小説とかマンガとかで見ることはあるけど、でも、妖怪ってもう昔のものだよね」
そんなふうに思っていたりしませんか?いいえ。決して、そんなことはないのです。

人間が人間として生きていく限り、妖怪も妖怪として、きっとそばにいるのです。

【参考文献】
編・小松和彦『日本妖怪学大全』(小学館、2003年)

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