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遷宮というのは、神様が新しいお住まいに引っ越しされること。
5月に出雲大社、10月には伊勢神宮と、日本の神社の双璧で行われました。
でも内容には大きな違いがあります。
出雲大社は60年ぶりだったのに対し、伊勢神宮は20年ぶりというのはご存じだと思いますが、
根本的な違いは、出雲大社は修復だったのに対し、伊勢神宮は建て替えだったことです。
■なぜ建て替えるの?
出雲大社の現在の社殿は1744年の造営で、国宝です。
立派な建築なので、おいそれと建て替えるわけにはいきません。
今回は主に屋根の修復が行われました。
一方の伊勢神宮は掘っ立て柱にかやぶきの原始的な造りで、
定期的に建て替えなければ、とてもじゃないがもちません。
伊勢神宮の遷宮をもう少し詳しくみてみましょう。
神様のお住まいを建て替えて引っ越していただく、というのはご承知の通り。
でもそれだけではないんです。
新居には神様のご衣装や鏡、琴といった身の回り品や、刀剣、彫刻品などの宝物も収められます。
合わせて1500点を超え、どれもが当代一流の人たちの手で、20年前の前回と同じものが新調されるんです。
■トキの羽根がない!
ここが、伊勢神宮の遷宮のすごいところで、「前回と同じ」ということは、
技法はもちろん、材料も同じということ。
遷宮が始まったのは1300年も昔ですから、材料がなくなってしまいそうになることも少なくありません。
その代表的なものが神宝の「須賀利御太刀」です。「すがりのおんたち」と読みます。
この刀の柄の部分の飾りにはトキの羽根を2枚使うことになっているんです。
日本では一時絶滅したトキですが、前回は保存されていた羽根で急場をしのぎ、
今回は石川県の動物園で飼育中のトキの羽根を使ったそうです。
トキに限らず、そんなピンチの連続だったと思います。
それを乗り越えて、同じものを作り替える繰り返しで引き継がれてきた神様の装束や宝物。
遷宮は1300年前からのタイムカプセルなんです。
■もったいない! 古い宝物、江戸時代は焼いたり埋めたり
で、古いお住まいにあった宝物などはどうなるの?ということが気になりますよね。
江戸時代までは20年間保管したあと、焼いたり埋めたりしていたそうです。
明治以降は一部のものは保存されるようになり、伊勢神宮の展示施設「神宮徴古館」で 紹介されています。
遷宮には様々な行事や祭りがあります。
お木曳きや宇治橋の渡り始めなどが8年にわたって繰り広げられ、真っ暗闇の中でのお引っ越しとなりました。使われた木曽ヒノキは1万本を超え、宝物などの制作費も含めた総経費は550億円にも。それをすべてお賽銭と寄付で賄ったそうです。
■もっと知りたい そんな方は「せんぐう館」へ
遷宮についてもっと詳しく知りたいという方は、先に紹介した 神宮徴古館に行けば、
古いお住まいにあった宝物やお衣装を見られます。
また、外宮の近くに新しくできた「せんぐう館」では、お住まいの一部の原寸大模型や、
前々回のお住まいの扉(本物です!)などが展示されています。
スケールの大きさがわかります。百間は一見にしかずですよ。